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第三章 焦眉之急

第三章 焦眉之急


【1223年5月、サイト】
 初夏の眩しい太陽が降り注ぐ中、大森林からは湿った風が吹いている。その風に乗って、大森林の彼方から雨雲が運ばれて来て、雲一つない晴天の下に、薄い雨が降らしていた。
 オーギュストの船“カルボナーラ号”はサイト港に停泊している。その甲板では、オーギュストとナルセスが、日傘の下、カードゲームを楽しんでいた。そこに、小さなヨットが近付いてくる。
「おーい」
 大柄な男が手を振った。
「あれ、マックス君じゃないのか?」
「だな」
 オーギュストは、テーブルに並ぶ赤いカードと黒カードを、指で叩きながら答えた。

 その頃、雨合羽をまとった4人が、停泊中の商船に近付き、船長に声をかけていた。
「すまない。船を借りたい」
 男の声がした。
「駄目だね」
 船長は無下に断る。そして、「もたもたするな」と若い船員を怒鳴り散らした。
「どうしても船がいるのだ。頼む」
 今度は女性の声がする。
「しつこいね。カリハバールの連中が、大運河から大艦隊を送り込んできたんだ。当分どの船も出港しねぜ」
 そう言って、船長は顔を引っ込めた。諦めて、4人が顔を見合わせた時、再び船長が顔を出す。
「ああ、そう言えば、この先の船が南に向かう、とか言ってたぜ。サイトの船乗りじゃなくて、傭兵らしいから、信用できない奴等だがな」
「あ、ありがとう」
 女の弾ける声がした。

「で?」
「だから、あのアフロディースと言う女が、お前の事血眼になって探してんだよ。俺はそれを教えてやろうと――」
「そいつは一大事だな。ギュス、レイズだ」
 ナルセスがコインを2枚投げる。
「だろう。だから、すぐに逃げだそうぜ」
 赤い酒を飲む二人の顔を、マックスが交互に覗き込む。だが、二人ともカードゲームに夢中で、目を合わせようとしない。
「大変だったろう? さらにレイズ」
 2枚のコインの後、5枚のコインを撒いて、オーギュストが優しい口調で訊く。
「へえ?」
「あんな小さなヨットで、ここまで来るのは苦労しただろう」
「あ……あ、ああ。そうーだ……な。でもほら、俺もアルバトロス号の卒業だし、このくらいは――」
「だよね。実はこの船、人手不足なんだ。ちょっとだけ手伝ってくれないか」
「(お!!……お!!……)しょうがねえなぁ……」
「ありがとう。これで安心できる」
 オーギュストが笑って右手を出す。それを、頭を掻きながらマックスが握った。
「じゃ、この前の部屋をまた使わせて貰うぜ」
 忙しい忙しい、とはしゃぐように、マックスは船室へと向かう。
「いいのか?」
「故郷じゃ、脱走兵扱いされて、居場所がなかったのだろう。田舎とはそんな所だ。マックスの船乗りとしての腕は確かだし、魔術通信技術も一級だ。それにあの体格、威嚇ぐらいにはなるだろう。だが、リーダーはナルセスだ。お前が決めてくれ」
「船の事はすべて任せると言った。コール」
 ナルセスは5枚のコインを綺麗に重ねて、中央に押し出す。
「ツーペア」
「悪いな、フラッシュだ」
「ちぃ」

 ナルセスはカレンをオルレランに送り届けた後、またサイトに戻ってきた。この時オーギュストは、サイトの鍛冶屋に剣を注文し、その完成を待っていた。
 桃源郷という店でナルセスは、オーギュストとリューフに、3人で組もうと持ちかける。
「俺のリーダーシップに、お前達の魔術と剣を合わせれば恐いものなどない。バランスに優れた組み合わせだと、俺は思うぞ。どうだ、お前達の能力を俺の元で伸ばしてみないか?」
 ナルセスが言う。その時、リューフが「ちょっとナルシストが入っているから」と耳打ちをした。
「だが、組んでどうする? 俺がカリハバールと戦うのは私怨だ。部隊を全滅させられた復讐をまず優先するぜ」
「構わんさ。多種多彩な才能を統轄するのも、リーダーの資質の一つだ」
 オーギュストが笑って、リューフを見る。そして、「だろ」「だな」と口を動かし合った。
「俺はお前達を利用して、天下に打って出る」
「天下?」
 オーギュストとリューフは互いに酒を注ぎ合いながら、聞き返した。
「笑うな! 俺の夢だ!」
 ナルセスが本気{むき}になって大きな声を出す。
「笑っちゃいない。だが、天下かぁ、いいね」
 オーギュストが一気に酒を飲み干した。そして、今度は本当に笑い出す。安い酒がたまらなく美味く思えた。
「そう、夢はデカイ方が面白い」
 リューフも心地好く酔っている。
 それに、ナルセスはむっとする。
「まぁ、だったらいいぜ。あんたの、そのリーダーシップを、俺も利用させてもらうよ」
 オーギュストが言い終わると、リューフも大きく頷く。
「そうと決まれば、早速、旗と制服を決めないとな。それからあの船の名前は俺が決め直す」
「何事も形から入るタイプだから」
 リューフがぼそりと呟いて、オーギュストは声を上げて笑った。

「で? そのカーターと言うのが、お前を軍に売って、お前の女を奪ったのか?」
 ナルセスが裏返しのカードを一枚捲って、オーギュストに視線をちらりと送った後、マックスに訊いた。
「そうそう」
 マックスはパンを頬張って何度も頷く。
「ルーシーがお前の女だったとは知らなかったなぁ」
 オーギュストは言いながら、新しいカードを配る。ルーシーとは、ルーシー・カオル・ナイトという女性の事で、黒い艶のある長い髪が特徴の、オーギュストの同級生である。才色兼備として、地元では有名な存在だった。また、カーターとは、アルバトロス号でオーギュストと同期で、首席だった男である。アルバトロス卒業生が次々に志願する中、彼は地元の自警団に入っていた。「父親が自警団の団長だから仕方がないんだ」と仲間には、涙を流し説明していた。
「女って言うか、そのー……」
「ようは憧れてたんだろ?」
「なーんだ」
 オーギュストが呟くと、ナルセスが軽く言う。
「いや、違うって、出兵する時、頑張ってね、優しく言ってくれたんだ」
「誰にでも言ってたんだよ」
「嘘!」
「そういうガードの緩い所のある女だったからな。レイズ」
 オーギュストが6枚のコインを投げる。
「ルーシーを悪く言うな! お前だって……あれ」
「どうした?」
 ナルセスは5枚のコインを重ねて置くと、途中で言葉を切ったマックスに問う。
「そうか、お前はあの無人島で見た、とか言う、すっごい美人がよかったんだよな」
「誰だ、それ?」
 ナルセスは急に興味のある表情をした。
「こいつ以外、誰も見ていないそうなんだが――」
「夏の日の幻さ」
 オーギュストがカードを中央に投げ出す。
「終わりにしよう。客だ」
「客?」
 ナルセスが聞き返すと、雨合羽をまとった4人組が乗船してきた。
「船長は?」
 その問いに、ナルセスとオーギュストが目を合わせる。
「責任者は俺だ」
 ナルセスが手を上げる。
「すまないが、この船で荷物を運んでもらいたい」
「無礼だろ。人と話す時に、顔を隠すとは?」
 ナルセスが厳しい口調で言う。その鋭い眼は、この4人組のすべてを観察しようとしていた。4人はひし形に立つ。前の3人は頑丈な肩幅をしているが、もう一人は二回りほど小柄で、女性だと分かる。
「失礼した」
 先頭の男がフードを取る。見事な髭を持つ精悍な顔が出てくる。後ろの3人もフードを外したが、小柄な女性はすぐに顔を伏せる。その黄金の髪は、さっと後ろで束ねて、少し乱れていた。
「行く先は?」
「あんた達と同じ南のアーカスだ」
「どうする……?」
 ナルセスが呟き、視線をオーギュストに向ける。オーギュストはじっと女性を見ていた。
「報酬はここに」
 男が皮袋をテーブルに置く。ナルセスは黙ってそれを持ち上げて、重さを確かめる。そして、もう一度視線を送ったが、オーギュストはまだ女性を見ている。
「おい」
「うん?」
「どうする?」
 ああ、とオーギュストが頷く。
「危険は多いぞ。カリハバールと戦う事になるだろう。俺の指示に従うと誓えるならいいぜ」
「こちらにも条件が――」
「その女に言っている」
 先頭の男が答えようとした時、オーギュストがそれを遮り、そして、女性を指差す。
 女性が顔を上げた。同時に、3人の男達は女性の盾になるように身構えた。その時、女性は男達の肩を叩いて、一歩前に出てくる。小さな顔に、青く澄み切った瞳が少し吊り上がっている。頬がややこけているので、よりきつい印象を与えていた。
 女性は鋭くオーギュストを見る。それを涼しい顔でオーギュストは見返した。
「俺はカリハバールの魔獣を2匹始末して、大切な宝物を奪った。だから怨まれている。何としても殺したいと思っているだろうよ。俺と一緒に居ると、カリハバール連中が殺到して来るぞ。それでもいいなら乗せてやる」
「……」
 じっとオーギュストを見据えて、女性は口の端を上げた。
「カリハバールと戦う気概があるかと聞いている」
「カリハバールが恐いなら、このままワ国まで逃げればいい。望むところだ!」
 女性が燃えるような視線を向ける。
 ドゴン!
 緊張感が高まる中、背後で大きな物音がした。
「悪い……客とは知らなかった。鍛冶屋からだ。ここに置いて行くぞ」
 ぶっきらぼうに言う。
 振り返った男の一人が、目を見張った。
「リューフ・クワント!」
 その名に、女性が素早く振り返る。
「ありがとう」
 オーギュストは軽く笑って、さらりと礼を言う。そして、横のナルセスが鼻で笑った。
「うちのルーキーが失礼したが、と言う事だ。君達より俺達の方が強い」
 ナルセスが冷静に言う。
 そこに、「若い方は魔術師です」と男の一人が女性に耳打ちをした。女性は分かっていると頷く。
「護衛まで頼む金はないぞ」
「偉そうだな」
「偉いんだろ?」
 ナルセスの言葉に、オーギュストが嘲笑気味に言った。
「名は? 何と呼べばいい?」
「ティルだ」
「そうか、俺はギュス、こっちはナルセス、このデカイのが、マックス。さっきのが……紹介はいらないか。それじゃ、マックス、荷物の搬入を手伝ってやれ」
 オーギュストは握手を求めて右手を差し出したが、女性はすぐに背を向けた。


【ウェーデリア公国グリューネル】
 国防庁の一室で、情報局のジューク・スレードと治安局のバクスターが、会議を行っていたが、話は堂々めぐりになりかけていた。
「如何な理由で、脱走兵を逃がした!?」
「脱走とは違うのではないか?」
 バクスターが強い口調で迫ると、スレードは軽く反論する。
「戦場を遠く離れたロードレス神国に居たのだ。これが何よりの証拠」
「だからこそ、おかしい。どうやってロードレス神国に行くのだ、うむ?」
「そんな事知るか。本人に聞けばいいだろう」
 バクスターの言葉に、スレードは不快げに鼻を鳴らした。
「そうやって、随分派手な取り調べをやっているそうじゃないか。放火や略奪の報告もあるぞ!」
「裏切り者を庇う者達を、処断しているだけだ。言い掛かりは止めて貰いたい」
「二人とも止めよ!」
 そこに、会議の進行役であった、国防副委員長のロイド伯爵が割って入る。それに、二人は顔を反らして、大きな息を吐いた。
「スレード卿は、この手配の者を知っていたのか?」
「ディーンの方を調査中でした。将来ウェーデリアの一翼を担う逸材でしょう」
「まだ17のガキだぞ」
 バクスターが鼻で笑った。
「戦果が証明している」
 スレードがファイルをテーブルに投げ出す。
「戦場で何が起こったのか調査すべきです」
「何が起こったか? そんな事は分かっているだろう。負けたのだ。完敗!」
 バクスターが投げやりに両手を上げた。
「……」
 それに会議室は沈黙する。
「だからこそ、我々はっ!」
 バクスターはテーブルを両手で叩く。
「国防体制を締め直そうと躍起になっているのだ!」

 結局、会議は何一つ結論を生む事はできなかった。
 エドワード2世の指導力不足とこの敗戦によって、国内の至る所で、勢力争いが激化していた。この情報局と治安局の対立もその一つの現れである。
 スレードはロイド伯爵を馬車まで送っていく。
「バクスターはこの状況を利用して、自分の権力を全国に張り巡らせるつもりだ」
 ロイド伯爵は歩きながら言う。
「分かっております」
「これから何かとやり難くなると思うが、宜しく頼む」
 馬車の前で立ち止まり、一度振り返って、スレードの肩に手をおいた。それから、馬車に乗り込んでいく。
 スレードは深く頭を下げた。
 そして、馬車が動き出した瞬間、爆風がスレードを吹き飛ばす。馬車は激しく炎上していた。


【カナン半島沖】
 サイトを出港した船は、南に進み、カナン半島を肉眼で捉える事ができるようになった。
 船尾付近では、オーギュストが細身の操舵輪を操っている。そこに、ティルローズが歩み寄る。
「何処かで会ったか?」
「以前は聖騎士の格好をしていた」
 その言葉に、ティルローズは目を細めて、記憶を探る。
 その時、マストに登っていたマックスが突然叫んだ。
「右舷に、近付いてくる船があるぞ」
 オーギュストが船首へ走った。そして、望遠鏡をマックスの指す方向へ向ける。
「見た事のない船影だ」
「では、カリハバールか?」
 慌てて駆け寄ったナルセスが訊く。
「大きさから見て、駆逐艦かな」
「どうする?」
「どうする? これから英雄になろうという男の台詞か?」
 オーギュストが笑った。
「ああ、そうだな」
 ナルセスも笑い返す。
「リューフ、行けるか?」
「愚問だ」
 青竜偃月刀の手入れをしていたリューフが顔を上げて、不敵に笑う。
「よし、進路このまま」
「どうした?」
 そこに、船室からティルローズが出てくる。
「見れば分かる。カリハバールの軍艦だ」
 ナルセスがいきいきと答える。
「どうしてここに……まさか!」
「偵察だろ」
 緊張するティルローズに、オーギュストは簡単に答えた。
「この船で勝てるのか?」
 ティルローズの後に出て来た聖騎士の一人が訪ねる。それにオーギュストは、うんざりした表情をした。
「リューフ」
「愚問だ」
 リューフは聖騎士の背中にぴったりと立ち、その頭の上で囁く。
「お前達は船倉に隠れていろ。足手纏いだ」
「カリハバールから逃げるつもりはない、と言ったはずだ」
 ティルローズがオーギュストを睨みつける。
「いいだろ」
 オーギュストはティルローズの瞳を覗き込んで、鼻を鳴らした。
「このままじゃ衝突するぞ」
 操舵輪を持つマックスが叫ぶ。それにオーギュストは、させろ、と叫び返す。
「駆逐艦の方が大きいんだぞ!」
 それに、またマックスが悲鳴のような声で叫ぶが、今度は完全に無視されてしまう。
「何かに掴まれ!」
 いよいよ接近すると、オーギュストが指示を出した。
 2隻はぶつかる。凄まじい衝撃に、船が揺れた。ティルローズとナルセスはその場に立っていられず、床に転がる。だが、駆逐艦の船首が押し潰されたように砕けるが、オーギュストの船はほぼ無傷だった。
「乗り込んでくるぞ!」
 倒れた際に頭をぶつけたらしく、血を流しているナルセスが叫ぶ。だが、その時すでに、オーギュストとリューフは敵艦に乗り込んでいた。
 リューフの武勇は圧倒的だった。
 駆逐艦に飛び込むと、リューフの青竜偃月刀が唸りを上げる。甲板で白兵戦に備えていた騎士の胴体を、真っ二つに切り裂く。そして、その上半身が着地するよりの早く、振り戻して、一気に四つの首を宙に舞わした。
「水遁!」
 その背後で、オーギュストが精霊魔術を完成させる。水面から水柱が立ち昇り、上空でく捻るように反転すると、一気に落下して、甲板のカリハバール兵を押し流していく。
「雑魚はいい。船長を確保しろ」
 背後からオーギュストが叫ぶ。
 リューフは頷くと、青竜偃月刀を旋回させて、艦橋へと道を切り開いていく。その後を悠々とオーギュストが進んだ。
 戦いは続いたが、リューフに敵う者はおらず、駆逐艦の船長は間も無く降伏する。
 この戦いの後、オーギュストはマックスに命じて、カリハバール艦隊の魔術通信システムと暗号表を手に入れた。


【ウェーデリア公国グリューネル】
 ロードレス神国の大使館の庭に、アフロディースはいた。無心に詠唱を続ける彼女の前には、弓を構えた3人の神官戦士がいる。両手を胸の中で合わせて、無表情に立つアフロディースに対して、兵士達の顔はどれも緊張して、蒼褪めている。
「よし」
 アフロディースの声に合わせて、矢が放たれた。アフロディースを射抜くと思われた瞬間、オレンジ色に光り輝く半円形のレンズに弾かれる。
「すばらしい!!」
 3人の神官戦士は手を叩いて、アフロディースを褒め称える。
「お見事です!!」
「どうやったのですか?」
 質問を受けて、アフロディースはポケットからハンカチを取り度して、それを地に落とす。
「物体は重力に引かれる。その重力を伝達する重力子だ。その重力子を両手の中で圧縮させて湾曲させる。と、外部から強く押せば、反重力が作用して弾き返されてしまう」
 理屈はこうだ、とアフロディースは説明した。それに神官戦士たちは、憧憬のまなざしを向けている。アフロディースは、はにかんだ笑顔を作った。
 その時、館から、大主教から魔術通信です、と役人が声をかける。アフロディースはすぐに駆け出していた。
「エリース湖を南下する許可を」
「この時勢に難しい。我々はいつまでも君のわがままを許せる状況にはない」
「しかし、猊下」
「くどい」
 窓のない狭い部屋は、鉛の壁に囲まれて、光の一切入らない密閉空間である。その中央には、光の粒子で構成された球体が浮かび、その中心には人が映し出されていた。痩せているせいか、非常に鋭利的に見える男で、ゲオルギオス大主教と言った。幻獣退治などで名声を集めた勇者で、現在は国防の重責を担っている。また、アフロディースの師匠でもある。
「あの男は非常に危険なのです」
「一介の脱走兵に、こだわり過ぎだ。もっと大局を見よ。アフロディース」
 アフロディースは、その美しい唇を噛む。彼女は、オーギュストが絶対魔術、精霊魔術を自在に操った事実を、報告していない。
「アルティガルド軍の動きが怪しくなってきた。すぐにでも、全神官戦士団を実戦配置する事になろう。すぐに戻れ。以上」
 光の球体が消えて、室内は真っ暗になった。その中で、アフロディースは黙ったまま、手を握り締めて太腿と叩く。


【カナン半島オーディン大神殿】
 マックスが怪訝な表情で無人島を見ている。
「何だあれ……前に来た時にはあんなのなかったぞ」
 無人島から真っ直ぐカナン半島に、3層構造のアーチ式の橋が伸びている。
「古代の水道橋か? しかし、大きい……」
 ナルセスが右手を顎に当て、その肘を左手で支えながら、唸るように言う。
「あのおかげで、オーディン神殿を見つける事ができた。見ろ」
 ティルローズが橋の端を指差すと、深い緑の中に、白い石の建物が見えている。
「あれが伝説のオーディン大神殿か……」
 ナルセスが身を乗り出す。
 オーディン大神殿は、かつて、セレーネ帝国を滅ぼし、聖サリス帝国を建国した、カール大帝が建設したものである。伝説の闘神に武運を祈願、統一後、世界最大の大神殿を献上した、と文献に残っている。しかし、女神エリース信仰の強いエリーシア中原では、時代とともに忘れ去られ、今ではその場所すら分からなくなっていた。
「正確には拝殿だな」
 オーギュストは橋沿いに船を進めながら呟く。それにナルセスが振り返った。
「どういう意味だ?」
「あそこに闘神はいない。あの無人島が、多眼人の墓地で、それを神域として設計されている」
「じゃ、闘神とは多眼人の事か?」
「いや、正確には違う。闘神オーディンは、多眼人の創造主だ。多眼人はオーディンの体の一部から生まれた……」
 最後に、「と言い伝えにはある」とわざとらしく付け加える。
 ティルローズは会話の中に出てきた多眼人という言葉に、身体を僅かに震わせていた。それを、オーギュストは見逃さない。
「見ろ。大理石を敷き詰めた通路を挟むように泉の跡があり、そこには12個の石の塊が転がっている。どうやら、獅子の像だったようだ。その奥に、ドームを架した円筒形の建物がある」
 まるで話の流れを反らすように、ティルローズが説明を始める。
「多眼人は嫌いかい?」
 オーギュストが軽い口調で訊く。
「……」
 ティルローズが怒気を含んだ瞳で、オーギュストを睨む。
 と、ナルセスがオーギュストに、「止せ」と強く言った。
 それに、オーギュストは素直に頷く。そして、船をサリス軍の大型戦艦“ラヴィアンローズ”の横につけた。
 ラヴィアンローズから縄梯子が降ろされ、傷だらけの聖騎士の鎧をまとった男が下りてくる。サリス親衛隊隊長のペルレス・ド・カーティスである。
「ティルローズ様、よくぞご無事で!」
 顔中から、安堵の感情が溢れている。
「心配をかけた。お姉様は? 皆は?」
「何事もありません」
 ペルレスは笑顔で答える。
「そうか、では食料を運んでくれ」
「はっ」
 その会話をナルセスはじっと聞いていたが、オーギュストが水面に飛び込むのを、目の端に捉えた。
 オーギュストは魔術師のローブを脱ぎ、上半身裸になって、泳いで陸へと向かう。そして、石垣の岸によじ登ると奥の建物へと向かって歩き出した。途中、獅子の像の周辺には、傷つき疲れ果てた兵士達の姿があった。150名足らずいるだろうか。その者達は皆うずくまり、ぴくりとも動こうとはしない。
 円筒形の建物の前には、正面8柱の玄関柱廊がある。円柱の上には三角形の木造の屋根があったようだが、今は朽ちてなくなっている。10段ほどの階段を昇り、玄関柱廊に入ると、高さ12メートルほどの大きな扉がある。
 オーギュストは大きな扉の脇にある、人間サイズの扉を押して中に入った。中には大きな空間が広がっている。天井には、闘神オーディンと破壊神シヴァの絵が描かれている。さらに最深部の壁の中に、高さ10メートルほどの石像が2体、鎮座していた。
「多眼人のゴーレムか……」
 オーギュストはジッと見詰めて呟く。
「右は完全に駄目だが、左は……動くかもしれん……」
 その時、声がした。
「誰? ティル?」
 石像の脇の扉から、美しい女性が出てくる。さらさらの黄金の髪をしたサリス皇家第一皇女ローズマリーである。侵入者の存在を知り、彼女は毅然とした態度で、その男の前に立った。
「何者です!」
 背筋を伸ばし、胸を張る。そして、威厳のある声をドームの中に響き渡らせた。
「ここは神聖なる場所です。立ち去りなさい!!」
 一度横目で見て、それから口笛を吹き、オーギュストは向き直る。そして、ローズマリーを足元から頭まで観察するように見る。その顔には興味の色が浮かび、口が「美しい」と音を発せず動いていた。
「訊いているのですか!!」
「……あっ」
 ローズマリーの声でオーギュストは我に返る。ローズマリーの洗練された装束{いでたち}は、眩いばかりに輝いていた。一瞬でもその高貴な美しさに見惚れたという事実が、オーギュストの癇に障った。
「まぁ、姉の方でも良いか……」
 オーギュストはローズマリーに聞こえないほど、小さな声で囁く。それから、声を大きくして、子供っぽい嫌味を言い、ゆっくりとローズマリーに近付いて行く。
「あんた達は面白い。自分達が棄てた神にもう一度すがろうというのだから」
「……」
 咄嗟に、返す言葉が浮かばない。動揺しているのは明らかで、美しい瞳が左右に揺れていた。オーギュストはローズマリーの直前で直角に折れ、一段高くなった祭壇に昇る。そして、隅にある幾つかの丸く光沢のある板を触りだした。その間も、視線はローズマリーから外していない。
「だいたい、カリハバールに負けたこと自体、神罰かもな」
「……あぁ……」
 気品溢れたローズマリーの表情が一瞬にして曇った。その反応をオーギュストは楽しんでいるらしく、にやりと口の端を上げた。
「くだらないお喋りは止めろ!」
 オーギュストが入ってきた扉から、ティルローズが大きな足音を立てて歩いて来る。
「お姉様、このような下賎の職にある者の言葉を、真に受けてはいけません」
「本当のことを言っただけだ。お前達はオーディンの逆鱗に触れているのだ」
「ああ……」
 ローズマリーが口を押さえて、瞳を潤ませる。
「貴様、よくもぬけぬけと! 抜けェ!」
 ティルローズは剣の柄に手をかけた。
「いいのか、この神聖な場所を血で汚しても」
「……はっ! 止めなさい、ティル!」
「しかし、お姉様……」
「いけません。剣を抜く事は許しません」
「くっ、命拾いしたな……」
 悔しそうな顔をして、ティルローズが剣から手を離す。
 オーギュストは子供のように掛け声を出して、祭壇を飛び降りる。
「いい心掛けだ。オーディンもさぞお喜びだろう」
「ふん、バカバカしい。貴様が闘神の何を知っているというのだ」
 オーギュストは乾いた笑い方をする。
「何がおかしい」
 睨むティルローズに、オーギュストがゆっくりと近付く。
「伝説の闘神よ。エリーシアの安寧の為、戦う力をお与え下さい。陛下を、お姉様をお救いください。闘神よ、一生あなたにおつかえします。どうか願いをかなえて下さい」
 オーギュストは裏声で言った。それにティルローズの顔が真っ赤になる。
「聞いていたのか……? お前はあの時の子供!」
「俺が聞いたんじゃない。聞いたのは、あの船の老人の遺体さ。君の願いをかなえるために、あんな姿になって、俺から左目を奪った」
「何を訳の分からない事を!」
 ティルローズは右足を一歩踏み出して、右手を横に振った。
「何れ分かる。取り敢えずは、あの最後の多眼人の老人を埋葬してやろう。一緒に。その後、君の処遇を考えるとしよう」
「貴様のような子供の戯言に、付き合っている暇はない。消えろ!」
「暇はないだろうね。ほら、残酷な現実が口をあけて、すぐそこまで来ている」
 オーギュストは、ティルローズが開けっ放しにした扉を指差す。その時、船鍾が鳴り響いた。
「な、何だ!?」
 明らかに狼狽した声を、ティルローズが上げる。
「俺達はつけられていた。いや、案外手引きした奴がいるのかもしれん。お姫様方、如何なさいますか? 戦いますか、それとも――」
 ティルローズはオーギュストの言葉が終わるのを待たずに動き出していた。
「ペルレス! ペルレス、戦いの準備を!」
 ティルローズは扉へと向かう。
「ティル……」
「お姉様は、そこで祈っていて下さい」
 心配そうな姉の声に、扉の枠に手を置いて、ティルローズは答えた。
「折角の余興、楽しませてもらうよ」
 オーギュストが楽しげに言った。
「……クズが」
 ティルローズは吐き捨てると、外に出た。階段の下には30人ほどの聖騎士が集まっている。そして、ペルレスがティルローズの前に進み出た。
「これだけか」
「申し訳ございません」
 ティルローズはぐっと奥歯をかみ締めた後、後ろを振り返った。ドアの前にオーギュストとローズマリーの姿がある。そして、オーギュストが大げさに肩をすくめている。ティルローズはキッと唇を噛んだ。
「ペルレス戦闘準備だ」
「はっ」
 聖騎士達は良く鍛え上げられているらしく、素早く壊れた石造などを動かして、バリケードを作り出す。
 見事な手際に2度3度と、オーギュストが手を叩く。それから、湖の方を指差す。
「見えてきた。1、2、3、4、……9、どうやら10隻はいるようだ。あの旗は、間違いないカリハバール艦隊だ」
「……っ!」
 ローズマリーは生唾を呑み込み、喉を鳴らす。
 次の瞬間、ラヴィアンローズに火矢が射ち込まれた。
 燃え上がる炎に、くっきりと照らされて、カリハバールの将兵が上陸してくる。敵将アイクルが、チェーンメイルで包まれた、鍛え上げられた体を弾ませていた。
「無駄な足掻[あが]きは、家名を傷付けるだけですぞ。悪いようにはしない。降伏させよ」
 これに対して、ティルローズは一本の矢を射ち込んだ。
「これが答えだ」
 矢は真直ぐにアイクルに向かって飛んで行く。
 アイクルはそれをバスタードソードで巧みに叩き落とした。そして、前と同じ大きな声を発した。
「整列ーっ!! 前進!」
 カリハバールの海兵隊が、整然と列をなしてじわじわと接近し始めた。
「弓構え!」
 ティルローズは命じると、レイピアを振り上げた。一つ唾を飲み込んで間を作ると、レイピアを振り下ろす。
「放て!」
 バリケードから一斉に矢が放たれ、アイクル隊を襲う。

「間合いが遠いな」
「……」
 オーギュストが囁く。と、ローズマリーの眉に曇りが差す。

「シールド!」
 再びアイクルの声が響き、それに合わせて、最前列が一斉に盾を掲げた。そして、一瞬遅れて矢が、その盾に突き刺さる。
「前進!」
 再びゆっくりと、アイクル隊が進み出す。
 ティルローズがもう一度矢を番えさせた時、突然アイクル軍の後方から矢が放たれた。それは大きな放物線を空に描き、石のバリケードに突き刺さる。そこから、炎を立ち上がった。

「炎の矢か、出し惜しみする気はないらしい。なかなかの良将だ。これはやばいかも」
「……ティル……」
 オーギュストが腕組みをして戦いを解説する。ローズマリーは不安そうに手を合わせた。

 番えられた矢を放つ事なく、弓を持った聖騎士達は隊列を乱した。この好機をアイクルは逃さない。
「突撃!」
 シールドを棄てたカリハバール兵が、バトルアクトやグレードソードを振りかざして突進して行く。それに対して、聖騎士達も弓を棄て、剣を抜いて迎え撃った。

「不安か?」
「……はい」
「乱戦になった。こうなっては数が多いほうが有利だ。もうすぐ伝統あるサリス家が滅びるぞ」
「あ、っああ……」
 ローズマリーが膝から崩れ落ちる。
「女神エリース、闘神オーディンよ、いったい何をお望みですか? 何卒御慈悲を……、一生をかけてこのわが身を奉げます」
「……本気か?」
 その時、オーギュストの顔が真剣になる。
「ええ」
「ではその望み俺が、かなえてやる」
「え?」
「この巨大な扉は何の為か分かるか? これはゴーレムの通路だ」
 眼帯の奥で赤い瞳が輝く。
「目覚めよ、ゴーレム!」
 オーギュストの声に反応して、ゴーレムが数百年の眠りから覚め動き出した。
「ああ!!」
 ぎしぎしと軋む音をたてながら、巨大な扉が完成して以降初めて、その本来の機能を果たす。
「何だ?」
 戦場の兵士達が戦いを忘れてその光景を眺めた。ゴーレムはその姿を外気にさらすと大きな咆哮を上げた。
「う、うぁあああ」
 全長10メートルの石の巨人は、ゆっくりとオーギュストとローズマリーを跨ぎ、階段をよろけながらも降りていく。
 オーギュストはその後に続いた。聖騎士は左右の泉に慌てて逃げ散る。ゴーレムは石のバリケードを蹴り破るとアイクル隊に襲い掛かった。アイクル隊は炎の矢を再び放つが、ゴーレムはもろともせず進む。そして、左右の腕を一振りするごとに、4,5人の兵士が吹き飛ばされていく。浮き足立つアイクル隊は、我先にと船へと退却して行く。
「逃がしはしない。焼き払え!!」
 オーギュストの命令に、ゴーレムは咆哮で答えた。そして、口から閃光を放つ。その閃光は水面を横に一線、カリハバール艦隊の船を6隻沈めた。波打ち際で燃え上がる自分達の船をアイクルは茫然と見詰める。
「一隻も逃がすな!」
 オーギュストがさらに命じる。ゴーレムはアイクル達を越えて湖水に入ると、腰までの水に浸かり、再び咆哮とともに光を吐いた。残り4隻を光が貫き、あっという間に撃沈する。だが、次の瞬間、ゴーレムはぴたりと動きを止めた。
「ちぇっ、もう終わりか……長い事使ってなかったからなぁ。まぁいい。十分役割は果たしてくれた」
 オーギュストは石畳を進んでいく。そして、アイクルの前に立った。
「ここは神聖な場所だ。それを汚した罪は万死に値する」
 冷たく言い放つ。
「だ、黙れ、小僧!」
 アイクルはバスタードソードを思いっきり振り上げた。オーギュストは素早く身を沈めて、腰の剣に手を掛けた。
 アイクルはオーギュストから発せられる無言の威圧に、振り上げた剣を降ろす事ができない。時間が凍り付いたようにアイクルの動きは止まった。そして、緊張に耐えかねて、たじろぐ。その瞬間、辺りにカチンという、剣が鞘の収まる音だけがこだました。そして、突然、アイクルの腹が裂け、鮮血が吹き出す。目にも止まらぬオーギュストの居合抜きだった。
 オーギュストは茫然とする両軍の兵士を横目に、悠然と戻って行く。
「……なのか?」
「ま、まさか……」
「だが、他には考えられん……」
 こんな会話があちらこちらで行われた。オーディンの僕であるゴーレムを使いこなし、圧倒的な剣技を誇る隻眼の剣士。そして何よりこの神殿という独特の雰囲気が、ある想像を全員に抱かせた。
「どうだ、約束は果たしたぞ。今度はお前の番だ。ローズマリー?」
 そこには震え跪き、神に対するのと同じ様に手を組んだ姿があった。その瞳からは涙が溢れている。
「……申し訳ございません。数々の無礼をお許しください」
 涙ながら言った。
 オ-ギュストはローズマリーを軽々と抱きかかえ、ドームの奥へと向かう。そして、ゴーレムの裏の小部屋へと連れ込んだ。
「抵抗しないのか?」
「御心のままに……」
 ローズマリーはすべてをオーギュストに委ねている。目はきらきらと輝き、本当に彼を神の使者だと信じているようだった。
 オーギュストはローズマリーを床に投げ出す。腰まで伸びた黄金の髪がふわっと円を描くように広がった。その上にオーギュストが重なっていく。
「美しく、そして、可憐だ……」
 オーギュストとローズマリーの顔が接近する。と、オーギュストの指が、黄金の髪を掬う。しなやかな髪が、指と指の間を流れていく。
「永遠の忠誠を誓います。わたくし達をお導き下さい……」
 オーギュストがふっと笑う。彼女はそれを同意と受け取った。そして、固く瞼を閉じる。
「あぁ……」
 唇と唇が重なった。純白の頬に朱がさす。オーギュストはこの美しい皇女の唇を味わいながら、身体の線を確認するようにゆっくりと触れるか触れないかの微妙なタッチで撫でていく。銀糸の刺繍が施された白いドレスで覆われた身体は、極めて華奢で、抱き締めただけで折れてしまいそうだった。
 そして、自然と手がローズマリーの背中に回り、一つずつボタンを外していく。
「あっ、いや……」
 ほどなく、胸の抑えが緩み、小ぶりだが張りがある膨らみが露になった。咄嗟に、ローズマリーの両腕が交差して、その胸を隠そうとする。そして、顔を横に背けて、唇を固く結んで、眉を寄せた。
「力を抜け」
 オーギュストはローズマリーの手首を掴む。
 その痛みに思わず瞳を開くと、その瞳の奥をすべて見透かすように、赤い瞳が覗き込んでいた。ローズマリーはオーギュストの言葉に瞳を潤ませながら、もう一度瞼に力を入れ、代わりに腕の力を抜いていく。ゆっくりと両腕が左右に分かれて、再度白い胸がオーギュストの前にさらされる。
「綺麗だ」
「はずかしい……」
 オーギュストの右手がローズマリーの左胸を包み込み、柔らかなその感触を確かめる。そして、右の胸の突起に唇を運んだ。
「あっ、ああん」
 ローズマリーの身体がぴくっと硬直する。だが、オーギュストは荒々しくその突起に貪り吸った。そして、指でもう一方の突起を、強く摘み上げた。
「あん、あっ、あああん……」
 オーギュストは一旦口を離すと、口と乳首に一本スーッと糸が延びていた。
 もう一方の突起を再び口に含み、舌で転がす。人差し指がローズマリーの脇を流れ、肋骨の一本一本を確認するように落ちていく。そして、腰の辺りで手は突然速度を上げて、尻を丸く一撫でした。
「はっ、あぁあああ……!」
 その甘い疼きに、ローズマリーの脚が弱々しく開いていく。
 オーギュストはその脚の間に、素早く腰を割り込ませると、手で太腿を撫で上げる。そして、もう一方の手を、白いショーツの中に滑り込ませると、薄い茂みをかき分けて、無垢な秘部を犯していく。
「ひっ、あ、あぁあああん」
 ローズマリーの体がブリッジのように反る。くちゃくちゃという卑猥な音が、締め切られた狭い空間にこだましていた。
 それでも、オーギュストの指は秘部を弄び、クリトリスを弾き続けた。
「ひゃうんっ!」
 ローズマリーの体から力が抜け落ち、それを感じて、オーギュストはショーツを手際よく脱がしてしまう。
「あ、ああ……」
 恥じらいと抗議の視線をローズマリーは向けた。だが、一瞬の後、再び顔を横に向ける。
 オーギュストが白く細い脚を両脇に抱えた。
「ひぃぃっ! やあぁぁぁっ!」
 そして、重心が前に傾ける。
「ダメーッ! ヤメテーッ! イッ、痛いーっ!」
 ローズマリーの貌が苦痛に歪む。オーギュストは初めゆっくりと腰をグラインドさせ、その感触を十分に感じて、それから、ローズマリーが徐々にその痛みに慣れてくるとその速度を上げていく。
「やっ、あん、あん、あん、あーん」
 オーギュストの体の下で、白い胸の膨らみは、上下に激しく揺れた。
「ああ、だめっ、だめぇー!」
 ローズマリーの腕が、オーギュストの首を押す。踵がオーギュストの腰を叩く。そして、一段と高い声が、口から発せられた。
 その口をオーギュストの唇が塞ぐ。
「ひゃぁーんっ、ウックゥーーーーー!!」
 同時にオーギュストも白濁とした液体をローズマリーの胎内に吐き出す。
 と、ローズマリーの額から、白い光が発した。その光はオーギュストの赤い瞳に吸い込まれていく。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 胸を弾ませて荒い息をローズマリーが吐く。それはまるで生気をすべて奪われたように、ぐったりとしている。
 オーギュストは名残惜しそうに、ローズマリーから、ゆっくりと体を起こす。そして、秘部から流れ出るどろりとした液体に赤い色が混じっているのを見た。
「いい子だ」
 呆けた貌を見下ろしながら、優しく髪を撫でた。
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Date:2011/01/09
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