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□ エリーシア戦記69 □

69-2

 セリア郊外に地下貯水池跡がある。奥行きは100メートルを超え、幅も60メートルほどで、高さは約10メートルもある。この巨大な空間を、大理石円柱が整然と並んで支えている。
 都市建設のために作られ、長く放置されていた。割れた天井から差し込む月の光と、絶妙な湿気が、独特の不気味さを醸し出している。
「オン・バサラ・タラマ・キリク!」
 ここに、黒いローブをまとった一団がいた。
 祭壇を作り、生贄を捧げて、全員で呪文を詠唱している。そのリーダーらしき人物が、11人の人間を殺して、その血で魔法陣を描いた。
「おお!」
 魔法陣が青白く輝き、薄い紫色の霧を発生させる。見守る集団から、一斉に、感嘆の声が漏れる。
「叶った!」
 リーダーの男が叫んで、ローブのフードを外して素顔を晒した。金髪をオールバックにすることで、鋭く青い眼光を誇示しているようだった。まさに、大衆を魅了する精悍な顔立ちである。
「今こそ、我が誓いが、我らの願望が成就したぞ!!」
 男は魔法陣の中に進んで、そこに浮かんだ紅蓮の槍を握る。
「この槍は、一度、我が手を離れれば、標的の心臓を必ず貫く。もはや我に敵はなし!!」
「おお!」
 感嘆は歓声となった。しかし、そこへ水を差す者がいた。
「大変です。帝国の犬が地上を覆っています」
 歓喜の頂点で、頭から氷水を被せられたように、地下の世界は静まり返る。
「好都合だ。手間が省けたぞ。飛んで火に入る夏の虫よ――!!」
 男は豪語して豪笑する。
「ふふふ、全通路には無数のトラップや魔術結界が仕掛けてある。我が地下要塞を、とっくりと堪能してもらおうではないか!」
「おお!」
 引いた潮が寄せるように、再び活気を取り戻す一同。
 その時、脇の簡易トイレのドアが開いた。
「おいおい、汚れ酷いぞ。クエン酸ないのか?」
 オーギュストが、左手でズボンのベルトを巧みに締め、右手でトイレブラシをぶらぶらさせながら出てくる。
「貴様、何処から入った? いや、何時からそこに居た?」
 開いた口が塞がらぬ風情で、矢継ぎ早に質す。
「あそこの入り口から正々堂々と、そしたら、気取った女に儀式の前に、掃除しとけって言われて――」
 トイレブラシを振り回して説明するから、飛沫がそこらへんに飛び散る。慌てて、周りから人が消えていく。
「あんたもさ、悪巧みするんなら、もうちょっと慎重にやりなさいよ。折角の金庫も中身確認せずに鍵をかけたら意味ないだろう?」
 眉をしかめて、諭すように喋る。
 と、その背後の簡易トレイで、裸の女性が、どさりと倒れた。
「マリア……!?」
 裸で気絶している女を見て、男が愕然と声を漏らす。
「あれ、お前のか?」
 オーギュストが、トレイブラシで指す。
「トイレ掃除を手伝えというから協力してやったんだが、儀式があんまり長いんで、ついつい暇潰しに頂いたんだが、拙かったか?」
 悪ぶれることなく言い放つ。
「……」
 男は真っ青な顔に青筋を浮かべ、わなわなと震えている。
「まあ、しかし、締りもあんまり良くないし、堪え性もなくすぐ漏らすし、まああんまりいいもんじゃないな。折角掃除したのに、またやり直しだ。……やれやれだぜ」
 わざとらしく顔を顰める。
「貴様を殺す!!」
 男が槍を肩に担いで、乾坤一擲、投げる――が槍は手を離れない。
「な、なぜ、飛ばぬ!?」
 あまりの驚きで、頭から憤怒も消し飛んだようだった。
「あんまり、もたもたしていたから、少し手伝ってやろうと思って、魔法陣に追尾機能をオフにするよう設定し直してやった。危ないからね」
 オーギュストは、舌を出しておどける。そして、急に声のトーンを落としていく。
「馬鹿な……」
「馬鹿なのはお前だ!」
 なぜ、与えられた運命の中で生きようとしない?
 なぜ、地に足をつけて生きない?
 なぜ、楽をしようとする?
なぜ、俺の定めた法に逆らう?
「貴様などに従うものか。我らは我らが神と共に新たな世界へ行く」
 男は宣言し、交渉の可能性を自ら消した。
――剣では相手に分があるだろうが、こちらは幸い槍。慎重に距離を保てば勝機がある!
 と、彼は本気で思っている。
「ならば死ね」
 オーギュストが、挑発するように、トイレブラシを、前に衝いたり戻したりを繰り返す。そのたびに、飛沫が男の眼前をかすめて、やや大げさに男は仰け反る。
「戦士の眼前に無礼な!」
 ついに、我慢し切れずに紅蓮の槍を衝く。
 槍先は、ロングジャケットの上を滑って、脇をかすめるように通り抜ける。
 オーギュストは半身となり、腕と背中で槍を挟み込んだ。
 男は懸命に槍を引き抜こうとするが、全く動かない。
 そして、槍の側面を、独楽のようになめらかに一回転して、一挙に男に迫る。
「ひぃ!」
 逃げようとするが、間に合わない。
 トイレブラシが、男の頭を直撃して、その半分を吹き飛ばした。
「降伏しろ――」
 男の死体を踏みつけ、残った集団を見渡して、強い口調で言う。
 しかし、その声に逆らう者はいない。もはや誰もが腑抜けである。夢から覚めたように熱を失っている。
「抵抗は無意味だ!」
 用意した文言を言い終わると、緊張を解いて、トイレブラシを床に捨てる。
 その瞬間、集団の影から、小柄で貧相な男が独り飛び出してきた。
「ついに貴様を見たぞ!」
 その小柄な男は、左右にそれぞれ斧を投げた。斧には目があり、その瞳は、しっかりとオーギュストを捉えている。
「その命もらった!」
 気合の声を発して、自身もナイフを抜いて走った。
 小柄な男は思考する。
――大きく弧を描いた斧を、奴は先ほど奪った槍の先と尻で、叩き落とすだろう。ならば、その隙に、死角の足元から懐に飛び込めば勝てる!
「へえ?」
 だが、思惑はいきなり外れる。意外にも、突然敵が眼前に迫っていた。そして、苦も無く腕を掴まれると、そのまま引っ張られていく。気が付いた時には、顔の左右に斧が食い込もうとしていた。
「全員動くな!」
「禁魔術法違反で全員を逮捕する」
 この直後、親衛隊がけたたましく突入してきた。そして、手際よく、残った全員を捕縛した。
「全員、さらし首にしろ」
 オーギュストは地上に繋がる階段を上りながら、隊長のナン・ディアンに命じた。
「御意」
「さらに、身元を調べて、三親等以内のものをすべて死罪としろ」
「……御意」
 ナンが、生唾を一つ呑み込む。
「しかし――」
 足取りが重くなったナンを追い抜いて、ランがオーギュストの後ろについた
「まるで師匠に殺されるために、現れたようですね」
 ランの何気ない言葉に、突然、オーギュストの足が止まる。そして、徐に振り返ると、無表情でじっとランを見た。
「……」
 ランは、頬がぴくぴくと痙攣するのを覚えた。
「無駄口はいいから。戦利品の管理を怠るなよ」
「御意」
 ナンとランは、階段上で跪いて拝命した。
 二人を残して、一人地上に出る。
 外はまだ未明である。眼下に広大なエリース湖が広がっていた。
「えっ……!?」
 目の端で捉えた湖面に、白い月の影が映っていた。一瞬、それが人の姿のように見えた。
『あなた、頭がいいのね』
『そんなことはないよ。だって君の方が……』
『嫌味で言ったのよ』
『……』
 遥か遠い記憶が、オーギュストの足を止める。
――俺はあとどれくい生きれば、君に追いつけるのだろう……。
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Date:2013/01/18
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Thema:18禁・官能小説
Janre:アダルト

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